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最終更新日:2021/09/27(2017/01/26公開)
東京には、古き良き時代を思い起こさせる
アール・デコ様式の建物が
意外と残っていることをご存じですか?
開発が進み、新しい建物、高いビルがどんどん建てられている東京ですが、古い建物も残っているんです。
今回は、東京や東京近郊で見ることができるアール・デコ建築についてご紹介します。
アール・デコという言葉はよく耳にするけど、改めて「どんなもの?」と聞かれると答えに詰まってしまいそうですね。
アール・デコとは、1910年代半ばから1930年代にかけてヨーロッパやアメリカを中心に発展した装飾美術のことです。
幾何学模様をモチーフにした直線的なデザインが特徴で、機能性や合理性が高いとされています。
アール・デコ建築の代表的なものとしては、クライスラービルやエンパイア・ステート・ビルディングといったニューヨーク・マンハッタンの建築群が挙げられます。
どちらもアールがつくので同じようなもの?と思いがちですが、アール・ヌーボーはヨーロッパを中心に広まった新芸術運動のこと。19世紀初頭の産業革命により粗悪な大量生産品が出回り、その反動から生まれたそうです。
植物や花などをモチーフにした曲線的なデザイン、エレガントで装飾性の高い点が特徴です。
このアール・ヌーボーが第一次世界大戦が勃発した頃から衰退し、その後に広まったのがアール・デコです。
ヨーロッパやアメリカで流行したアール・デコ建築は、東京をはじめとした日本でも広がりをみせました。
当時の様子に思いを馳せながら、アール・デコ建築巡りをしてみてはいかがでしょうか。
アメリカの建築家、ウィリアム・メレル・ヴォーリズが設計した老舗のホテル。川端康成や三島由紀夫などの文豪たちが、執筆の際の常宿にしていたことでよく知られています。
客室数はわずか35室ながら、すべての部屋の内装が違い、ロビーをはじめ館内のいたるところでアール・デコの意匠を見ることができます。
平成16年、東京の歴史的建造物に選定された新宿伊勢丹本店。昭和8年に建てられて以来、新宿のランドマーク的存在感を示しています。
垂直性を強調したゴシック様式を取り入れたアール・デコ建築です。
7階から屋上へ向かう途中には花やとんぼなど自然のモチーフを幾何学的に表現したステンドグラスがあり、通る人の目を引きます。
もともと、旧帝国大学出身者の親睦と知識交流の場であった学士会館。関東大震災後に建築された震災復興建築です。
重厚でモダンな雰囲気にあふれた建物は平成15年、国の有形文化財に登録されました。宿泊、レストラン、会議室、結婚式場などの施設があり、現在では一部施設を除いて一般利用が可能になっています。
昭和2年に建てられた日本橋三越本店。
建物外部のデザインはルネサンス調、建物内の吹き抜けや細部のデザインはアール・デコ調が採用されています。
さらに、日本橋三越本店につながる地下鉄銀座線・三越前駅の連絡通路の柱や照明の飾りなどもアール・デコの装飾が施されているので必見です。
築地のランドマークとも呼ばれる聖路加国際病院が建てられたのは昭和7年。
十字架がそびえる中央の塔は、青いタイルでアール・デコ調の装飾が施されています。
病院でありながら礼拝堂が併設されていたため、戦時中も聖路加病院とその周辺は米軍からの空爆を逃れられたといわれています。
戦前、パリに遊学していた朝香宮夫妻の邸宅として昭和8年に建造され、昭和58年に美術館として開館しました。
建物全体が「アール・デコの美術品」とも称され、平成27年に国の重要文化財に指定されています。
横浜気象台は昭和2年に完成したもので、アール・デコの意匠が集約された玄関とその上の塔屋が特徴です。
設計を担当したのは繁野繁造という20代前半の技師で、当時の最先端のデザインと機能性を取り入れたものとなったようです。
外観はシンプルかつシャープなイメージ、内装は階段の手すりなどがアール・デコ調であたたかみを感じさせ、そんな外観と内装のイメージのギャップも魅力のひとつです。
昭和3年に建てられ、平成8年に国の有形文化財として登録された神奈川県本庁舎。知事が執務する現役の庁舎としては全国で2番目に古いものです。
「キングの塔」の愛称で親しまれ、洋風建築(アール・デコ建築)と日本趣味が調和した荘厳な雰囲気が特徴。日没から22時までは塔のライトアップも行われています。
船の内装がアール・デコで統一されている氷川丸。誕生したのは昭和5年、アール・デコの全盛期の頃です。
流れるような曲線と白い壁で構成された大階段から通路、天井、扉などあらゆるところでアール・デコの意匠を見ることができます。
大正15年に、野田商誘銀行本店として建てられ、現在はキッコーマンの系列会社である千秋社の社屋として使用されています。
ちなみに「商誘」は「醤油」にかけられているそうです。
建物全体が直線を活かしたアール・デコ建築で、外壁に貼られた黄色い石が最大の特徴です。玄関上部の装飾など、時代を超越した美を味わうことができます。
興風会館は、キッコーマンの創立者である茂木、高梨両家が設立した興風会により昭和4年に建てられました。
正面デザインはルネサンス風の左右対称の意匠、玄関はゆったりとしたロマネスク風、照明器具はアール・デコ風...と西洋建築の見所が詰まった建物です。
今回は東京や東京近郊にあるアール・デコ様式の建築物についてご紹介しました。
続々とできる最新のスポットをチェックするのも楽しいですが、長い時間を経て今なお残っている建物には、やはり独特の存在感があるもの。
昭和初期頃の最先端のデザインが駆使された建築物は、今見ても、とても新鮮でおしゃれですね。