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制震リフォームとは?
「耐震」は法律でも義務付けられているように、現代の住宅には当たり前の性能になっています。より地震に強い住宅を求める方に、近年注目されているのが「制震」です。
リフォームで、木造住宅を制震住宅にすることは可能です。実際の制震リフォームがどのように行われているのか、具体的にいくらぐらいかかるのか、これまでの実績を基に詳しく解説します。
制震ダンパー「MER SYSTEM」を採用した新築住宅。制震テープも併用しています。(江東区の新築事例より)
耐震とは、建物内部に設置した装置によって地震の際の建物の振れを軽減する技術で、文字通り「建物が地震に耐える」ようにすることです。「制震」も、地震に強い安全な住まいにするという目的は同じですが、その方法が少し異なります。
制震では、地震の揺れを吸収すると同時に、地震の力を他の力に変えることで、建物の崩壊を防ぎます。 何度も繰り返される揺れを押さえ、構造体(建物)を損傷させる力を弱めることで、建物を守るのです。
2016年に発生した熊本地震では、震度7という非常に強い前震から28時間後に、同じく震度7を記録する本震がありました。 前震では倒壊を免れた住宅が、本震で全壊してしまった例に見られるように、通常の耐震補強では強い揺れが繰り返しきた場合に耐えられないことがあります。
制震は地震の揺れと力を軽減するため、熊本地震のように連続して起こる地震にも、より強い建物にできると言えます。 耐震と制震の違いについては、下記のQ&Aもご参照ください。
1階が車庫になっている3階建て住宅。柱と壁を新設し、車庫の入り口に仕口ダンパーを設置して補強しました。(大田区・H様のリフォーム事例より)
リフォームでよく使われている制震装置は「ダンパー」です。
制震装置には様々なものがありますが、多くは大規模で高価なため、ビルやマンションなどに導入される例がほとんどです。
その中で「制震ダンパー」は木造住宅に取り付け可能な制震装置です。粘弾性ゴムや油圧を使った器具で、地震の際にしなやかに動き、地震の力を弱めて揺れを分散させることができます。
エコリフォームでよく採用している「仕口ダンパー」は、粘弾性物質によって地震の揺れを軽減する装置です。
住宅に取付可能な制震ダンパーにはいくつかの種類がありますが、エコリフォームでよく採用しているのが仕口ダンパーです。
仕口ダンパーは、2枚の三角形の金物に粘弾性のゴムを挟み、張りあわせた形をしています。 木造住宅の梁と柱の交点の部分を「仕口」と言い、この仕口に施工するための制震装置なので、仕口ダンパーという名前が付いています。
1階のビルトインガレージを補強するため、入り口の2か所に制震ダンパーを設置。安心して暮らせるお住まいになりました。(江東区・S様のリフォーム事例より)
仕口ダンパーは、仕口部分にやたらに取り付ければいいというものではありません。 建物の出入口や大きな窓などの開口部を仕口ダンパーで補強することで、大きな地震の際に非常口として機能するようになります。
都心でよく見られる、1階が駐車場になっているピロティ構造の住宅の駐車場出入口に取り付けたり、商店などに使われていた建物の広い玄関部分などに設置するのがオススメです。
仕口ダンパーについては、下記のページで詳しくご紹介しています。
制震ブレースは、制震の働きを持つ補強材のことです。柱と梁で四角形に組まれた部分に対し、ブレースを対角線上に設置することで建物に横から働く力に対抗します。
ブレースは、木造住宅の耐震補強で使われる筋かいと同じように作用します。地震や強風などから建物を守り、変形や倒壊を防ぐ補強材です。
ブレースの一種、外付けタイプの筋交い金物「GDブレース」を設置した事例です。(文京区・F様のリフォーム事例より)
制震ブレースも、基本的には他のブレースと同様に、建物の変形や倒壊を防ぐものです。 柱と柱の間や、柱から梁、または土台から柱に斜めに取り付けることで、制震ブレースが地震の揺れを吸収し、揺れ自体を制御します。
制震ブレースとして各メーカーから様々な製品が発売されています。 摩擦ダンパーやオイルダンパーを用いたもの、粘弾性体(高減衰ゴム)を用いたものなどがあります。
徐々に一般的になってきた木造住宅向けの制震ブレース。形も様々なものが開発されています。
制震は主に大きな建築物に導入される技術で、よほど条件が整わない限り、木造住宅で完璧な制震を行うことは不可能です。 木造住宅のリフォームにおいては、「耐震」を十分に行った上で、プラスアルファとして「制震」を行う方法が取られています。
なお、建築基準法において建物を耐震構造にすることは義務付けられていますが、制震については義務付けられていません。 制震は任意で行うオプションのような位置付けとなっています。
新発想の三次元耐震補強金物であるコボット。
地震の揺れに耐える力を持つ壁を耐力壁と言いますが、コボットはこの耐力壁と同じ性能を発揮します。
柱に設置した金物が四隅でしっかりと支えています。これが耐震補強システム金物の「コボット」です。
多くの方が経験されていると思いますが、地震の揺れは何度も繰り返すものです。
2016年に発生した熊本地震では、震度7が2回観測され、多くの余震が起こりました。1度目の大きな揺れには耐えた建物が、繰り返す揺れによって倒壊した例も多かったそうです。
制震装置に使われる粘弾性物質やオイルなどは、地震のエネルギーを吸収して揺れを軽減します。制震装置の効果は1度で損なわれることはなく、何度も繰り返す大きな揺れに対して有効に働きます。
このように効果のある制震技術ですが、木造住宅での採用は少ないのが現実です。詳しくは下記の記事をご参照ください。
制震は地震の揺れを軽減する技術ですが、経年劣化などによって耐震性が著しく低下している木造住宅では、揺れを軽減する以前に建物が倒壊してしまう恐れがあります。
揺れに耐える力をもたせる「耐震」に、揺れを軽減する「制震」をプラスすることによって、耐震性がさらに上がることになります。
耐震を行うことは法律でも義務付けられています。まずは耐震補強を行い、合わせて制震の技術を盛り込むことが大切です。
耐震+制震を行ったリフォーム事例。屋根裏に仕口ダンパーを設置しました。(江東区・N様のリフォーム事例より)
耐震診断
(現状をよく把握する)
耐震計画を立てる
(+αで制震計画を立ててみる)
耐震工事と同時に
制震工事を併せて行う
「耐震」については以下のページで詳しく解説しています。
制震工事の工事規模はどのような装置を採用するかによって異なりますが、ここでは制震ダンパーを設置する場合をご紹介します。
制震ダンパーは、大きな開口部や構造的に弱い箇所に設置します。制震ダンパーは柱や梁などの構造体に直接設置する必要があるため、解体と復旧がセットになります。
前述のように、実際の工事は制震だけでなく、耐震も含めて計画することが重要です。 制震工事自体はそれほど規模が大きい工事ではありませんが、耐震リフォームなどと合わせて行うことをオススメします。
木造の作業場をリフォームした事例。壁の少ない建物には制震ダンパーや制震ブレースが有効です。(新宿区・青谷製作所様のリフォーム事例より)
制震リフォームは、耐震リフォームのように「評点から費用を計算する」のではなく「限界耐力計算」を行った後に対策を立てていきます。
費用については次の通りです。
耐震診断
木造2階建てで完成図面がある場合
10万~15万
耐震計画
15万~20万
限界耐力計算+
制震計画
20万~30万
耐震工事+
制震工事
制震について、一級建築士・塩谷敏雄が様々な角度から解説しています。
制震リフォームについては、下記Q&Aもご参照ください。