TOP > リフォームお役立ち情報 > リフォームQ&A > 住まいの設備 > 高齢者でも使いやすいキッチンのスタイルを教えてください。
最終更新日:2021/03/30
江戸川区の実家に、高齢の両親が住んでいます。
こんど実家をリフォームすることになったので、高齢の母でも使いやすいキッチンにしてあげたいと思います。
どんなスタイルのキッチンが、高齢者に向いていますか? オススメのキッチン設備や注意点も教えてください。
(江戸川区・C様)
ご高齢の方向けのキッチンに関するご質問ですね。
インテリアコーディネーターの阿部容子がお答えします。
ポイント
年齢を重ねると足腰が弱くなり、キッチンでの立ち仕事がだんだんつらくなってきます。 そこでご高齢の方にオススメしたいのが、座って使えるキッチンです。
一般的なキッチンは、作業台の下が収納になっていて脚を入れるスペースがないため、ふつうの椅子ではひざがぶつかってしまいます。 でも、高さのあるキッチンスツールを置けば、立っているのとあまり変わらない姿勢で作業ができます。 キャスター付きなら移動するのも便利ですね。
高齢になってから、キッチンの収納の扉にひざが当たってまっすぐに立てず、身体に負担がかかるという方がいらっしゃいました。 作業台が少し手前に出ているか、逆に収納が少し奥まっていれば、足もとにスペースができてひざが当たることもなくなり、ご高齢の方も車椅子をお使いの方も使いやすいキッチンになります。
そんな思いを形にしたのがLIXILのキッチン「ウエルライフ」。座った状態で楽に作業できる工夫がいっぱいのキッチンです。詳細はLIXILのサイトをご覧ください。
ウエルライフの施工イメージ(画像:LIXIL<ウエルライフ>より)
各キッチンメーカーでも、作業台の下をオープンにして、座って使えるタイプのキッチンをオプションとして提供しています。 オーダーメイドキッチンを造っているメーカーに、座って使えるキッチンを発注するのも一つの方法ですね。
キッチンの高さを決める時は、「身長÷2+5cm」を目安にすると良いと言われています。 しかし、高齢になると筋力が衰え、姿勢も崩れてくるので、ショールームなどで使用感を確認された方がいいでしょう。
また、キッチンスツールなどを置いて座って作業をする場合は、75cm~85cmの高さが適しています。 使い勝手には個人差があるので、実際にキッチンでスツールに座ってみて、手の届く範囲と楽な姿勢を確認することをオススメします。
ご高齢の方からは、「使い慣れているガスコンロの方がいい」という声もよく聞かれますが、安全面を考えるとIHクッキングヒーターを採用したいところです。
ガスコンロでは、ガスの消し忘れや、ガスの炎が洋服に燃え移る事故、天ぷら油の火災などが心配ですが、IHは火をつかわないので、こうした事故の危険性はありません。
また、IHクッキングヒーターは表面が平らになっているので、お鍋やフライパンの移動も楽ちんで、五徳に鍋を引っかけることもありません。ただし、IH専用のお鍋は従来のものに比べて重いものが多いのでご注意ください。
IHクッキングヒーターのメリット・デメリットについては、下記のQ&Aで詳しく解説しています。
高齢になると握力も弱ってきます。昔のキッチンによく見られたような、お湯と水のハンドルをひねって温度を調整する混合水栓は、ご高齢の方にとっては使いにくいものです。
一つのレバーで、水の量と温度が調整できるシングルレバー水栓を選ぶと良いでしょう。現在ではキッチンの水栓と言えばこちらの方が主流ですね。 シャワーヘッドが伸びるタイプの水栓も、座って使うのに便利です。
ポンとタッチするだけで水が出るタッチスイッチ水栓や、センサーに手をかざすだけで触らずに水が出るタッチレス水栓、足で操作できるフットスイッチ水栓もあります。実際に試してみて、使いやすいものを選びましょう。
キッチンには吊り戸棚を付けることが多いですが、あまり高い位置に設置すると、奥まで手が届きません。 ご高齢の方に限ったことではありませんが、目の高さくらいの位置に奥行きが浅めの戸棚を設置した方が使いやすくなります。
「キッチンのスペースに余裕がないので、やはり吊り戸棚が欲しい」という場合は、昇降式の吊り戸棚を採用するといいでしょう。 昇降式の吊り戸棚には、電動と手動があり、ふだんは高い位置にある戸棚を目の高さまで降ろせるので、奥までしっかり収納できます。
また、換気扇も高い位置に設置しますが、手が届きにくいようなら、リモコンで操作できるものを選ぶと良いでしょう。
タカラスタンダードのホーローキッチンに、手の届く位置まで下げられる収納棚「アイラック」を付けました。(江東区・K様のリフォーム事例より)
吊り戸棚は使わず、オープンなキッチンにした事例。床はコルクタイルです。(荒川区・O様のリフォーム事例より)
キッチンの設備に目がいきがちですが、キッチンの環境も高齢者が使いやすいように配慮が必要です。
床材は足腰の負担を軽減するコルクタイルなどをオススメします。適度なクッション性がある上、耐水性に優れているのでお手入れも楽です。 詳しくはリフォーム自然素材のページでご紹介しています。
もう一つ、忘れてはいけないのがキッチンの明るさです。 高齢になると視覚機能が低下するため、若い人の2~3倍の明るさが必要と言われています。 お料理中はレシピを見たり、食品のパッケージを読んだりと細かい作業も多いので、キッチンの照明は明るめの方が良いでしょう。
一方で、高齢になるとまぶしさを感じやすいため、照明の位置を工夫したり、カバーがあってまぶしくない照明器具を選ぶことをオススメします。 壁の素材や色によっても、まぶしさを軽減することができます。