TOP > リフォームお役立ち情報 > 住まいと暮らしのお役立ち > 住まいの豆知識 > 江戸時代に学ぶ住まいづくり。環境を守るエコな暮らし。

最終更新日:2021/10/11(2011/05/19公開)

江戸時代に学ぶ住まいづくり。環境を守るエコな暮らし。

江戸時代に学ぶ住まいづくり。環境を守るエコな暮らし。

21世紀は「環境の世紀」と呼ばれていますが、
現代の私たちの暮らしは環境にやさしいと言えるでしょうか?
江戸時代の暮らしと現代の暮らしを比べてみましょう。

現代の建物と人工建材

戦後の日本は、ひたすら快適性と利便性を追及し、大量生産、大量消費を続けて経済を発展させてきました。 その結果、日本人が長い歴史の中で培ってきた住まいづくりの知恵も忘れられてしまいました。

現在の住まいづくりでは、新しい加工技術によって造られた人工建材(新建材)も多く使われています。 人工建材は均質で安価なため、住宅の大量生産に向いているのです。

●廃棄された人工建材は...

戦後、大量に供給された住宅は、多くが30年ほどで建て替えの時期を迎えました。 人工建材を使った住宅は、耐用年数が比較的短かいと言えます。

建て替えの際、住宅の人工建材はスクラップとなり、ゴミ焼却炉で燃やされたり、埋めたてられてきました。 大量生産された人工建材は、短い期間で大量廃棄されることとなったのです。

人工建材は主に石油を原料として造られ、大量の化学物質が含まれています。 一部の化学物質は空気を汚染するほか、焼却時はダイオキシン類の発生にもつながると言われており、人工建材の廃棄は環境への影響が大きいのです。

解体時に出た廃材(リフォーム工事中ブログより)

江戸時代の住まいづくり

では、江戸時代の住まいづくりはどんなものだったのでしょうか。

日本の伝統的な民家に使われている素材は、木、稲ワラ、ヨシ、ススキ、竹、コウゾ、ミツマタなどの自然素材で、すべて植物です。 木以外の素材は1年~5年ほどで生長しますが、木は植えてから少なくとも30年以上、太い木材を取ろうとすると100年以上もかかります。 このため、建築に使われる木材はとても大切にされてきました。

木材は非常に丈夫で長持ちする上、再利用しやすい素材でもあります。現代でも古民家を解体してできた古材を再利用しているように、江戸時代の住まいづくりでも木材を徹底的に使いまわしていました。

●日本の伝統的な民家の構造

日本の伝統的な民家は、構造自体が長く使えて再利用しやすいように造られています。

玄関を入ると土間があり、続いて板敷きで吹き抜けの大空間があり、その真ん中に囲炉裏があるという主屋の構造に合わせて木の枠組みを造ります。 何世代経っても変わらないずっと使い続ける部分なので、丈夫な材料を使って、100年以上使えるようにしっかりと造りました。

主屋には、下屋と呼ばれる平屋を寄り添わせます。下屋は家族構成の変化に応じて増改築するため、それほど丈夫な材料を使う必要はありませんでした。 炊事場や風呂場、トイレなどの水場は耐久年数が短いため、建て替えしやすいように別棟として造りました。

●今では造れない伝統的な民家

現代では、伝統的な民家を建てる大工さんもいなければ、適した素材も揃いません。 もし伝統的な民家が蘇ったとしても、家族の形も暮らし方も変わった時代には合わないことでしょう。

自然素材も万能ではなく、施工に技術が必要だったり、手入れに手間がかかったりするデメリットがあります。 また、現代においてはかなり高価になっている素材もあります。

こうした自然素材が持つ弱点を克服するために誕生した人工建材ですが、今度は環境への脅威となりつつあります。 利便性やコストパフォーマンスの良さに偏りすぎることなく、サステナブルで環境にやさしい住まいづくりを心がけていきたいものです。

江戸時代のエコな生活

地球環境問題への関心が高まる今、お手本としたいのが日本の江戸時代後期の暮らしです。

江戸時代の初めには15万人ほどだった江戸の人口は、江戸時代後期になると110万~120万ほどになり、世界最大の都市の一つにまで成長しました。 このような人口過密状態の江戸でしたが、200年以上に渡る江戸時代の間、環境問題が起こることはありませんでした。

都市住民の糞尿は農村で肥料として使われました。木屑はゴミは銭湯の湯を沸かす燃料になり、燃料を燃やして出来た灰は、酸性土壌の中和や洗剤、釉薬、染色などに使われました。実に見事な循環型の社会です。

●少しの不便さが環境を守る

江戸時代の日本では、環境にやさしいエコな生活が当たり前だったんですね。

江戸時代の暮らしは、現代に比べれば質素で不便に感じられますが、自然に寄り添い、生態系を壊すことのない暮らしでした。 そのままの形で取り入れることは難しいですが、現代でも大いに学ぶべきところがあります。

住まいづくりだけでなく、毎日の生活にも少し手間をかけることで、環境にやさしい暮らしができるのではないでしょうか。

伝統的な民家は、深い庇を設けて雨や太陽光を避け、縁側や板の雨戸で空気の遮断層が造られていました。 屋根の上には換気用の越屋根もあり、エアコンなどなくても、暑さ寒さに対応できる造りになっていたそうです。

自然の摂理にかなった江戸時代の人々の暮らしを見習って、現代の住まいづくりに役立てていきたいと思います。

住まいと暮らしのお役立ちに戻る