能登半島地震 被害調査から考える[2] ― 地震に強い家・地震に弱い家

地震と建物を考える

前回の続きです。
東京都市大の大橋教授が最後にお話しされていた、現在の「構造計算」の問題についてです。


我々建築士は分業しています。
意匠設計と構造設計、また内装設計や店舗設計など様々な設計者がいます。
また作る建物により木造、鉄骨、鉄筋コンクリートなど構造に基づいて分業しています。私も建築士の端くれですが、木造のことしかわかりません。
しかし1級建築士として木造建物ならどんな設計でもできるはず。建築に携わって40年以上経ちますが、それは誇りに思っています。
だからこそ、木造住宅にかけては誰よりも多くの情報と知識を勉強しなければなりません。

特に耐震改修では、様々な経験と知識が必要です。
今回の「構造計算」のお話では非常にためになりました。
現行の設計法の課題と提案についてです。


ちょっと専門的な話になってしまいます。
現行の法律では、中地震の標準せん断力係数は0.2(大地震1.0)です。これは大正時代から変わっていないそうです。
少なくとも、これを0.25にできれば(0.3にすれば)耐震性能が全然変わってきます。

先日、台湾で台湾東部沖地震が起きました。M7.4(M7.2)の大地震です。
しかしながら、死者数はわずか2人です。(建物の下敷きになった死者数)
これは要因として、台湾の1次設計C0相当は0.23以上だからだそうです。

我が国は先進国といわれて久しいです。しかし長い間、地震に対する建物の係数は一つも変わりません。
建築基準法は最低限のレベルを決める基準です。それ以上にするのは、自己判断であり自己責任です。
けれどもM7.0の地震が日本全国で起き、何百人もなくなっている現状がある以上、やはり最低限の基準は国が率先して有効な基準とするべきです。

「地域係数Z」と呼ばれる数値があります。
これは、日本全国揺れやすさを地域ごとに数値を決めて、揺れやすい地域は厳しくし、過去地震があまりきたことのないような地域は軽減するものです。
ところが現在、日本全国で直下型の地震の被害が相次いでいます。
この地域係数(Z)を上部構造設計用の地域係数(Z1)基礎設計用の液状化危険度マップ(Z2)に変えるべきではないかと先生は仰っていました。
もっともな話です。地域のことは地域の自治体が一番理解しています。地域ごとのマップを参考にするべきです。


2025年4月に建築基準法は大きく変わります。
木造2階建ての壁量設計の課題は、構造計算により解消されると思われます。
一方で、性能表示壁量との不整合については不透明です。
今回の能登のような多雪区域の割り増し規定の追加が求められてきます。

我々のバイブルである「建築基準法」はそう簡単には変わりません。建物の性能は、我々が自主的に上げるしかないのです。
基準を守ればそれで良いという時代ではなくなりました。建物の性能は自分で決めるのです。

木造住宅は軽いのが特徴です。そのため耐震性能は実は上げやすいのです。
壁を増やすだけだけではなく、性能を上げる手段はプロの手腕です。
私たち専門家がより良い提案をして納得できる建物を作らなくてはならないと思うのです。

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